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治験実施計画書からの逸脱とは?|GCPレター第27号

■この記事は、2016年11月30日に発行されたGCPレターを転記したものです。

■GCPレターとは:臨床試験全体の質の向上とGCPの啓発活動の一環として、当社提携医療機関向けのGCP関連などのレターを2021年3月まで発行いたしました。

  GCPレター|シミックヘルスケア・インスティテュート(CHI) 臨床試験全体の質の向上とGCPの啓発活動の一環として、当社提携医療機関向けのGCP関連などのレターを2021年3月まで発行いたしました。 シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社(CHI)

■関連資料
GCPレター第27号(2016年11月30日発行)治験実施計画書からの逸脱


治験実施計画書には、倫理性・科学性を担保して治験を実施するための事項が規定されており、治験実施計画書に従って治験を実施することで当該治験薬や治験機器( 治験薬等) の安全性や有効性を正しく評価出来ます。

治験実施計画書からの逸脱が発生した場合には、被験者の人権や安全を確保できない可能性や、得られたデータの信頼性が低下し、データを使用できない可能性があります。

今回は治験実施計画書からの逸脱について考えてゆきましょう。


目次[非表示]

  1. 1.治験実施計画書の遵守
  2. 2.治験実施計画書からの逸脱が発生した時の対応
    1. 2.1.被験者の安全性の確保/ 適切な処置
    2. 2.2.逸脱に関する記録
    3. 2.3.モニターとの速やかな情報共有
    4. 2.4.再発防止策の検討
  3. 3.治験実施計画書からの逸脱に関する事例

治験実施計画書の遵守

治験責任医師等は、緊急の危険回避などの医療上やむを得ない理由がある場合又は治験の事務的事項のみに関する変更である場合を除き、治験責任医師が治験依頼者の事前の文書での合意及び治験審査委員会の事前の審査に基づく文書による承認を得ることなく、治験実施計画書から逸脱又は変更することは認められません(GCP 省令第46 条) 。

逸脱を防ぐためにも、治験責任医師は治験期間中、以下の事項が守られていることを随時確認するようにしましょう。

  • 同意取得の手順が適切で、同意書が保管されていること
  • 被験者が選択基準・除外基準に合致していること
  • 治験薬等の用法・用量が適切に守られていること
  • 併用薬剤・併用療法( 併用禁止、併用制限等) が適切に管理されていること
  • 被験者に必要な検査が適切な時期に実施されていること
  • 有害事象の定義を理解し、定義に基づいて、有害事象の発現の有無を確認すること
  • 重篤な有害事象が発現した場合は、実施医療機関の長及び治験依頼者に直ちに報告すること
  • 被験者のデータが診療録等の原資料に記載されていること
  • 有効性・安全性の評価基準を確認し、評価基準に基づいて症例単位の評価をすること
  • 被験者が作成する資材( 患者日記等) がある場合は、資材を回収し、その内容を確認すること
  • 未使用治験薬等があった場合は、回収されていること
  • 治験分担医師、治験協力者が業務分担リストに基づき、治験実施計画書を遵守していること

( 「治験責任医師のための治験実施チェックリスト平成24 年4 月版」( 日本製薬工業協会) より一部改編)https://www.jpma.or.jp/information/evaluation/results/allotment/check/lofurc00000065as-att/00all.pdf


治験実施計画書からの逸脱が発生した時の対応

被験者の安全性の確保/ 適切な処置

治験実施計画書から逸脱した場合には、第一に被験者の安全性を確保することが重要です。
逸脱の内容に応じて、被験者へ必要な処置を行い、治験を中止すべきか否かの判断や、安全性に関する追跡調査を行う等、必要な措置を行って下さい。

また、緊急の危険を回避するために行った逸脱は、被験者の安全及び人権保護が最優先であるという見地から、実施医療機関の長( 長を経由して治験審査委員会) 及び治験依頼者へ速やかに報告する必要があります。

逸脱に関する記録

治験責任医師等は、理由のいかんにかかわらず治験実施計画書から逸脱した行為をすべて記録しなければなりません。( 発生したすべての逸脱が原資料に記録されることが必要です。) 定まった様式や体裁はないので、実施医療機関の手順に則り、速やかに記録を残して下さい。

また、被験者の危険回避などの医療上やむを得ない緊急的な理由により治験実施計画書に従わなかった逸脱については、「緊急の危険を回避するための治験実施計画書からの逸脱に関する報告書( 統一書式8 )」を作成し、直ちに治験依頼者及び実施医療機関の長に提出して下さい。また、万一、除外基準に抵触する患者の登録や治験薬の取り違い等の重大な実施計画書違反を起した場合にも、直ちに治験依頼者及び実施医療機関の長に報告してください。

モニターとの速やかな情報共有

逸脱が発生した場合、被験者の安全性を確保した後、医療機関内で情報共有し、再発防止策を講じることが重要です。また、速やかにモニターと逸脱に関する情報を共有してください。モニターは、被験者の安全性が確保され、逸脱に対して適切な対応がされていることを確認する責務があります。

治験依頼者は、同様の逸脱を防ぐために、必要に応じて他施設にも情報共有を行い、再発防止策を実施します。

再発防止策の検討

被験者の安全性を確保した上で、逸脱事項を是正し、同じ逸脱を発生させないために再発防止策を講じることが重要です。
また、逸脱の内容や再発防止策について医療機関内で情報共有し、同じ逸脱を繰り返さないようにしましょう。逸脱が繰り返し発生し、改善されないような場合には、当該実施医療機関での治験を中止するよう治験審査委員会や治験依頼者から求められる場合もあります。

再発防止策を検討する際には、逸脱が発生した根本原因を分析しましょう。
それにより、根本的な解決が可能になります!!!

再発防止策を策定する際には、以下の事項もご参考にして下さい。

被験者側の要因で起こる逸脱:
治験薬の服薬不遵守や規定の日に来院ができないなど、被験者の事情によりやむを得ない場合もありますが、治験の目的を正しく理解し、治験に協力していただけるように説明を徹底しましょう。また、被験者によっては来院毎に繰り返し説明、確認するなど、被験者の状況に合わせて対応することが逸脱発生の防止に繋がります。

​​​​​​​実施医療機関側の要因で起こる逸脱:

多くの逸脱は、「実施計画書の熟知」「事前、直前および複数の目での確認」「十分なコミュニケーションと連携」で防ぐことができます。スタートアップミーティング等を活用して周知し、治験実施中も継続的に実施計画書を確認することが必要です。逸脱を発生させないための対策は治験スタッフの責務と考えて遂行しましょう。


治験実施計画書からの逸脱に関する事例

「治験実施計画書からの逸脱」の中で比較的発生頻度の高い事象として次の逸脱が挙げられますが、これらは、被験者の安全性に係わる重大な違反に繋がる可能性のある逸脱と考えられます。

  1. 選択基準、除外基準からの逸脱
  2. 検査スケジュールからの逸脱
  3. 併用禁止薬、併用禁止療法からの逸脱

例えば、『1. 選択基準、除外基準からの逸脱』について考えてみましょう・・・・

選択・除外基準は、被験者を適切に保護し、治験薬等の有効性・安全性を適切に評価するために、治験依頼者により根拠をもって設定されています。

  • 特に除外基準からの逸脱は、被験者の安全が大きく損なわれる恐れがあります。例えば、心臓疾患を既往歴・合併症として持っている人を除外としている試験において、合併症として心臓疾患を持った患者を参加させてしまったら、心臓疾患の悪化や重い副作用を起こす可能性があり、最悪の場合には、当該被験者の生命にかかわる恐れがあります。
  • 選択基準からの逸脱が多い場合には、治験薬等の効果が正しく評価されないことに繋がります。

《原因》

  • 通常診療では実施する機会の少ない検査項目や、既往歴・前治療等に関する規定を見落としてしまう。
  • 担当医師が、選択・除外基準を独自に解釈してしまう。
  • 通常の診療の経験から問題ないと判断し、組み入れてしまう。

《留意事項》

  • 治験責任医師等は独自の解釈をせずに、モニターに治験依頼者の見解を確認すること。
  • モニターから回答を得た場合には、モニター個人の解釈ではなく、治験依頼者により検討された見解であることを確認すること。
  • これらの点を踏まえて、内容を記録として残すこと。

シミックヘルスケア・インスティテュート株式会社(CHI) は、SMO(Site Management Organization:治験施設支援機関)として、全国4,000以上の医療機関と提携し、20年以上にわたり各医療機関を支援してまいりました。

これまでの知見・経験を活かし、治験・臨床研究の実施から事務的業務、IRB(治験審査委員会)事務局業務まで、医療機関における治験実施をフルサポートいたします。

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