
治験とは:新薬開発の重要なプロセス
治験は、新しい薬や医療機器の安全性と有効性を評価し、国の承認を得るための成績を集めるために行われる臨床研究です。この記事では、治験の基本的な概念と重要性について解説し、新薬開発と医療の進歩における役割をお伝えします。
目次[非表示]
- 1.治験とは
- 1.1.治験を行う医療機関
- 2.治験のルール「GCP」
- 2.1.治験を実施するためのルール
- 2.2.法律・GCPで定められているルール
- 2.2.1.治験の内容を国に届け出ること
- 2.2.2.治験審査委員会で治験の内容をあらかじめ審査すること
- 2.2.3.同意が得られた患者さんのみを治験に参加させること
- 2.2.4.重大な副作用は国に報告すること
- 2.2.5.製薬会社は、治験が適正に行われていることを確認すること
- 3.インフォームド・コンセント
- 3.1.インフォームド・コンセントの手続き
- 3.2.説明文書に書かれていること
- 3.3.プライバシーは厳重に守られます
- 4.治験の重要性
- 5.まとめ
治験とは
化学合成や、植物、土壌中の菌、海洋生物などから発見された物質の中から、試験管の中での実験や動物実験により、病気に効果があり、人に使用しても安全と予測されるものが「くすりの候補」として選ばれます。
この「くすりの候補」の開発の最終段階では、健康な人や患者さんの協力によって、人での効果と安全性を調べることが必要です。
こうして得られた成績を国が審査して、病気の治療に必要で、かつ安全に使っていけると承認されたものが「くすり」となります。
人における試験を一般に「臨床試験」といいますが、「くすりの候補」を用いて国の承認を得るための成績を集める臨床試験は、特に「治験」と呼ばれています。
治験を行う医療機関
治験を行う医療機関は、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP)」という規則に定められた要件を満たす必要があります。
- 医療設備が充分に整っていること
- 責任を持って治験を実施する医師、看護師、薬剤師等がそろっていること
- 治験の内容を審査する委員会を利用できること
- 緊急の場合には直ちに必要な治療、処置が行えること
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu1.htm)
治験のルール「GCP」
「くすりの候補」の人における効果(有効性)と安全性を調べる治験は、科学的な方法で、参加される方の人権を最優先にして行われます。
治験を実施するためのルール
治験を行う製薬会社、病院、医師は「薬事法」というくすり全般に関する法律と、これに基づいて国が定めた「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(GCP:Good Clinical Practiceの略)」という規則を守らなければなりません。この規則は欧米諸国をはじめ国際的に認められています。
法律・GCPで定められているルール
治験の内容を国に届け出ること
製薬会社は、治験を担当する医師が合意した「治験実施計画書」(「くすりの候補」の服薬量、回数、検査内容・時期などが記載された文書)を厚生労働省に届け出ます。厚生労働省は、この内容を調査し、問題があれば変更等の指示を出します。
治験審査委員会で治験の内容をあらかじめ審査すること
治験審査委員会では「治験実施計画書」が、治験に参加される患者さんの人権と福祉を守って「くすりの候補」のもつ効果を科学的に調べられる計画になっているか、治験を行う医師は適切か、参加される患者さんに治験の内容を正しく説明するようになっているかなどを審査します。
治験審査委員会には、医療を専門としない者と病院と利害関係がない者が必ず参加します。
製薬会社から治験を依頼された病院は、この委員会の審査を受けて、その指示に従わなければなりません。
同意が得られた患者さんのみを治験に参加させること
治験の目的、方法、期待される効果、予測される副作用などの不利益、治験に参加されない場合の治療法などを文書で説明し、文書による患者さんの同意を得なければなりません。
重大な副作用は国に報告すること
治験中に発生したこれまでに知られていない重大な副作用は治験を依頼した製薬会社から国に報告され、参加されている患者さんの安全を確保するため必要に応じて治験計画の見なおしなどが行われます。
製薬会社は、治験が適正に行われていることを確認すること
治験を依頼した製薬会社の担当者(モニター)は、治験の進行を調査して、「治験実施計画書」やGCPの規則を守って適正に行われていることを確認します。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu2.html)
インフォームド・コンセント
医師は「くすりの候補」を使えば病気に効果があると期待される患者さんに、治験への参加をお尋ねします。患者さんの自由な意思にもとづく文書での同意があってからでないと治験は始められません。この「説明と同意」のことを「インフォームド・コンセント」といいます。
インフォームド・コンセントの手続き
医師から、治験の目的、方法、治験に参加しない場合の治療法、「くすりの候補」の特徴(予測される効果と副作用)などが書かれた「説明文書」を手渡され、その内容がくわしく説明されます。
患者さんは、わからないこと、確認したいことなど、納得するまでどんなことでも質問することができます。そして、治験に参加するかしないかは、だれからも強制されることなく、自分の意思で決めることができます。説明を受けたその場で決めず、説明文書を持ち帰って家族に相談してから決めることもできます。
参加することに同意したら、「同意文書」に患者さんと治験を担当する医師が自筆で署名します。同意文書の控えと説明文書は患者さんに渡されます。
説明文書に書かれていること
- 治験の目的、治験薬の使用方法、検査内容、参加する期間
- 期待される効果と予想される副作用
- 治験への参加はいつでもやめることができ、不参加の場合でも不利益は受けないこと
- 副作用が起きて被害を受けた場合、補償を請求できること
- カルテ、検査結果などの医療記録を治験を依頼した製薬会社、厚生労働省、治験審査委員会の担当者が見ること
- 担当する医師の氏名、連絡先
- 治験に関する質問、相談のための問い合わせ先など
※説明文書に記載すべき内容は、GCPで定められています。
プライバシーは厳重に守られます
カルテ、検査結果には、患者さんの名前や住所、電話番号などが記載されていますが、プライバシーは厳重に保護されます。
出典:厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/fukyu3.html)
治験の重要性
治験は医療の進歩に不可欠な要素であり、以下のような重要性があります
新薬開発
治験は新薬の開発プロセスにおいて中心的な役割を果たします。薬剤の安全性と有効性を評価することで、新たな治療法の開発と導入につながります。
患者さんのメリット
治験に参加することで、患者は最新の治療法や新薬にアクセスする機会を得ることができます。また、治験の結果により、既存の治療法の改善や新たな治療の選択肢の提供が可能となります。
まとめ
治験は新薬開発の重要なプロセスであり、新薬や治療法の安全性と有効性を評価するために行われます。治験は新たな治療法の開発や患者への利益提供、医療の進歩、健康政策や規制への影響など、多くの重要な役割を果たします。医療の進歩と患者の福祉を追求するためには、適切な治験の実施とその結果に対する適切な評価が不可欠です。
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